武家に生まれた権兵衛は、亡き父の望みであった農家を志します。慣れない作業のため、畑を耕し種をまいてはカラスや小鳥に種をついばまれ、人々から笑われていましたが、あきらめずに努力を重ね、やがて村一番の農家になりました。また、権兵衛は鉄砲の名手としても知られ、田畑を荒らす獣を撃っては村人たちに喜ばれていました。
ある時、馬越峠付近で大蛇が人を襲っていることを知った権兵衛は、退治を決意します。
山に入りシダの葉に身を潜め、待ち構えていたその時、突如大口を開けた大蛇が権兵衛に向かって襲い掛かってきました。すかさずズンベラ石に念じて身を隠し、大蛇の急所へ「ズドン」と3発、弾丸を打ち込みます。見事に退治したものの、大蛇の毒を浴びた権兵衛は、村人の看病の甲斐なく亡くなってしまいます。しかし、村人たちのために戦った権兵衛は村の英雄として語り継がれ、権兵衛を偲ぶ「種まき権兵衛祭り」が今もなお、紀北町便ノ山地区にある菩提寺・宝泉寺で行われています。